黄金の意志

039

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……J・P・ポルナレフは、目を覚ました。 身体を起こす。暗闇に包まれた、どこかの家のリビングルーム。柔かく大きなソファの上。 毛布を払い身体を起こしながら、彼は寝ぼけた頭を大きく振る。 ここは農家だ。最初にポルナレフが見つけた建物。 そしてこの戦いにおける、最初の『仲間』と遭遇した場所。 「……起きたんですか、ポルナレフさん?」 「あ、ああ……ジョルノ、だっけか」 窓辺からゆっくり近づいてきた相手に、ポルナレフは少し焦りながらも頷いた。 思わず頭を掻いた左手には、全ての指が揃っている。足にも抉れた部分はない。 ジョルノ・ジョバーナ。目の前の青年のスタンド、『ゴールド・エクスペリエンス』が治してくれたのだ。 手にした石ころがウネウネと形を変え、自分の左手の一部になった時には、「うげっ!」と思ったのだが。 ……その青年の手元には、今は何やら何枚かの大きな紙が握られている。 「ポルナレフさんが寝ている間に、この家を物色させて貰いました。  新聞の日付によれば、『今・ここ』は『1999年』の『日本』。  ポルナレフさんにとっては『10年後の未来』、ぼくにとっては『2年前の過去』ですね。  カレンダーや住人が書いていた日記を見ても、やはり間違いないようです」 「『時空を越えるスタンド』か……信じられねーっつーか、信じたくねーっつーか。  信じるっきゃねーんだろーけどよォ……!」 ジョルノがテーブルの上に投げた新聞を一瞥して、ポルナレフは嘆息する。 最初、ジョルノからその可能性を聞かされた時は、まさかと思ったものだが……こうして証拠を見てしまえば。 いくら『主催者』がイカレてようとも、こんな新聞の細部に至るまで完璧に偽造したりしないだろう。いやできないだろう。 ポルナレフは改めてジョルノの提示した仮説を受け入れる。 開始早々に、出くわした2人。 ジョルノは根気強く、丁寧に、慎重に、ポルナレフの説得を行い。『時を越えて参加者が集められた可能性』を説明し。 最初はとても信じられなかったポルナレフも、その真摯な態度に、次第に耳を傾けるようになっていた。 ポルナレフも、人を見る目にはそれなりに自信もある。(女性を見る目には不安も残るが) 傷を完璧に治してくれた彼の『精神』が信頼に足るものであることは、容易に分かった。 ……傷が治り、混乱から脱し、安心してしまえば、次に訪れるのは疲労からくる眠気である。 長い会話を終えたジョルノが彼の欠伸を見て取って、「自分が見張っているから」と眠るよう促したのが、午前2時頃。 時計を見れば、今は4時。およそ2時間の睡眠を取れた計算になる。お陰で大分回復できた。 これからどうしようか、と考えを巡らせる彼に、ジョルノは落ち着いた口調で言葉を続ける。 「支給されたものよりも詳細な、この町の地図も見つけました。それに観光案内や町の広報誌も。  杜王町、日本の小さな地方都市。人口は5年前の統計で5万8713人。  町の花はフクジュソウ。名物は牛タンの味噌漬け。近くにあるS市のベッドタウンとして発展を遂げた町です。  一通り調べたのですが、『あの教会』がどこにあるのかは分かりませんでした。  後で、2人でぼくのバイクに乗って、街を一周しましょう。大きな建物でしたから、日中なら一目で分かるはずです」 「『あの教会』、かぁ。しかし、そんな所に手掛かりが残ってるかねぇ。どーにも期待できねーんだけどさァ」 「無いかもしれません。けれど、他にぼくらと『アラキ』を繋ぐ線はない。少なくとも一度は行ってみなければならない」 あの教会。 それはそう、この『ゲーム』が始まった時、全ての参加者が集められた、あの場所である。 あの広さからいって、町の中でもそれなりに大きな建物のはず。エリア内にあるのなら、探し出すのは不可能ではない。 そして、それを探す理由というのが――! 「『アラキ』を倒す。そのためには、少しでも情報が必要です。どんなつまらないものでもいい、彼に迫るための情報が。  あの時・あの場所に居たのが確かなら、なんらかの痕跡が残っていてもおかしくはない。  可能性が僅かでも、『そこ』から始めないことには、どうにもならない」 「まあ、な……。奴を倒して、この『首輪』をなんとかしねーと。  でないと最終的には、承太郎たちや、せっかく生き返ったアブドゥルと殺し合わなきゃならなくなるからなァ。  ……しかし、DIOや、ディアボロとか言ったっけ、『未来』の俺やジョルノが戦ってた奴?  そいつらはどーする気なんだよ? シャレにならない奴らだぜ?」 「警戒が必要なのは確かです。障害になるようなら排除せねばならない。しかしあくまで一番の敵は『アラキ』です。  状況によっては、その2名を見逃したり、あるいはその両名と共闘することすら考える必要があるかもしれない。  厳しい戦いになることは容易に想像できますが、それでもぼくらは、諦めるわけにはいかない」 何人もの人間が命を賭して戦っていた巨悪・DIOとディアボロ。 それをまるで「ついで」のように扱うジョルノ! ポルナレフは改めて目の前の青年の精神に圧倒される。 あるいはそれだけ『アラキ』という『敵』が別格なのか。本気でそんな別格な『敵』と戦おうというのか。 それに、『首輪』をつけられ生殺与奪の権利を握られた状態で、一体どう戦うというのだ? いくら考えても、ポルナレフには思いつかない。 彼に分かるのは、ただ1つ。 このジョルノという青年の考えには、『希望』がある。未来に繋がる『可能性』を感じる。 『邪悪』に立ち向かおうという『強い意志』、それだけは確実に信じられるッ! この『希望』、何があっても守り抜かねばならないッ! 先に繋げなければならないッ! ポルナレフは考える。『アラキ』という男の使った能力のことを。これから戦うことになる最大の敵のことを。 負傷と疲労から回復し、安心を得て、落ち着きを取り戻した今なら思い出せる。 あの教会であった一件を、確かに思い出せる……  *  *  *  あの教会に集められた時、一番最初に目を覚ましたのは、ポルナレフだったのだろうか。  周囲には眠りこける人々。少なくとも彼の気付いた限りでは、動いていた者はいない。  彼はまだ朦朧とした意識のまま、そしてすぐ近くに『誰か』が居るのを直感する。  目には見えない。けれど、確実に『気配』だけが、そこに。  「『シルバー・チャリオッツ!』」  考えるより先に身体が、いやスタンドが動いていた。  自分に触れようとしていた『見えない気配』、それに向けて剣を振るう。  ちょうど『見えない強敵』、ヴァニラ・アイスと戦った直後だったのが大きかった。  目に見えない気配、というものに彼は敏感になっていたのだ。反射的に腕が出た。  追い払うかのように無闇に振り回される剣に、その『気配』は素早く飛びのいて。そして聞こえたのは、小さな呟き。  『……バカナヤツダ。セッカク傷ヲ治シテヤロウト思ッタノニ。自業自得ダ、ソノママ行クガイイ!』  「?! 今の声はッ!?」  ポルナレフは慌てて周囲を見回すが、既にその時には『見えない気配』は遠くに去り。  それっきり『気配』は消えうせ、ポルナレフ自身、全て自分の勘違いだったのでは? と疑ってしまう。  そして寝ていた人々が、次々に目を覚まし始める。やがて『荒木飛呂彦』が登場する。殺し合いの開始を宣言する……  *  *  * ポルナレフは考える。あの『声』と『気配』は、一体何だったのだろう、と。勘違いでなかったなら何なのだろう、と。 スタンド? 傷を治すスタンド? 『荒木』のスタンド? 確かに喋るスタンドというのは珍しくない。 だが……もしもスタンドなら、スタンド使いであるポルナレフにも見えないのは、おかしい。 一般人ではないのだ。スタンドが間近に迫って、気付かないはずが…… と、ここまで考えて、彼は気付く。 『スタンドはスタンド使いにしか見えない』。逆に言えば、『スタンド使いには確実に見える』。それがスタンドの大原則。 しかし、エジプトまでの旅の中で出会った敵スタンドの中には、その原則に反する者が何人もいた。 巨大船の『ストレングス』。自動車の姿の『運命の車輪』。いずれも一般人にも見えたがために混乱してしまったケース。 もし、これらのような『一般人にも見えるスタンド』という例外が許されるというのなら。  スタンド使いにすら見えないスタンド、という例外も、存在しうる! 『荒木』のスタンドは、『スタンド使いにすら視認できない透明なスタンド』――あるいは『姿無きスタンド』―― そう考えれば、いくつか説明のつく現象がある。 アブドゥルの攻撃を、何の動作もせずに防いで見せた時も。支給品の山を、手も使わずに配った時も。 見せしめに1人の少年を持ち上げ、殺してみせた時も。 ……もちろん、透明だというだけで全てが説明できるわけではなく、まだいくつも謎は残っているのだが。 それでも、手がかりすら無かった能力の一端を説明することはできる! そう考えて、改めてポルナレフは戦慄する。 ただでさえ『荒木』に逆らうのは困難なのに、さらに加えて、それが『見えない』のだとしたら! 本当に戦うことなどできるのか!? 見えない敵と、いったいどう戦えばいいのだ?! ヴァニラ・アイスの時のように、通った跡が「削れて」分かるようなものではないのだ! ただ見えないだけなのだ! 「――――レフさん。ポルナレフさん! どうかしましたか!?」 「……あ?! あ、ああ、済まないジョルノ。少しボーッとしていたようだ」 「大丈夫ですか? 疲れが残っているなら、もう少し休んで貰っても構いませんが……」 「い、いや、大丈夫。気にしないでくれ。いつまでも寝てるわけにもいかない」 心配そうに顔を覗きこむジョルノに、ポルナレフは焦りながらも返事を返す。 まだ確信は持てない。『荒木』の能力も、また別の説明ができるのかもしれない。 現時点では、まだ言うべきではないだろう。無闇に絶望を深くする必要はないだろう。 ジョルノは『希望』なのだ。その『希望』を曇らせるべきではない。 ……そんなポルナレフの思考に気付くことなく、ジョルノは落ち着いた様子で言葉を続ける。 「地図だけでなく、食料品も探しておきました。  電気が使えず、目立つわけにはいかない以上、暖かいものは用意できませんでしたが……  缶詰やビスケットなどを見つけ、そこに置いておきました。もし空腹ならば、好きに食べて下さい。  一部はデイパックに入れて持っていってもいいでしょう。ぼくも既にいくつか貰っておきました」 「あ、ああ……」 「夜明けまで2時間あります。行動を起こすのは朝になってから、としましょうか」 「お、おい、いいのか? 今すぐ出掛けるべきじゃないか?  いや、ついさっきまで寝てた俺が言うのもナンだけどよ……」 「正直を言えば、ぼくも眠い。この時代に呼び出され、『ゲーム』に参加を強要される直前にも激しい戦いをしてましたから。  そうですね――夜が明けるまでの2時間ほど、仮眠を取らせて下さい。  ぼくは貴方の『1989年当時の仲間』の顔を知らないし、『1989年から来た貴方』はぼくの仲間を知らない。  相手の顔も見えない暗がりでは、不幸な事故やすれ違いが起こる危険もあります。  それに、あえて夜中に動く者は少ないはず。下手に動くべきではありません。日が昇ってからでもいいでしょう。  むしろ恐るべきは、ぼくらの疲労。そしてそれによって起きるかもしれない、今後の判断ミスです」 何から何まで、このジョルノという青年、隙がない。 ポルナレフは反論もできず、テーブルの上に積み上げられた保存食の所に向かう。適当な缶詰を手に取る。 そして入れ違いに、ジョルノがソファに横になり、毛布を被る。 どうやら先ほどまでとは逆に、ジョルノが眠ってポルナレフが見張りをする番、ということらしい。 「失礼かとも思い、貴方のデイパックはまだ調べていません。出発までに貴方の支給品も確認しておいて下さい。  最初の定期放送は恐らく午前6時頃でしょうが、いつどこからどのように放送されるか、まだ分かりません。  ぼくもそれまでには起きるつもりですが、もし寝ている間に始まってしまったら、聞き逃さないようお願いします」 「ん、わかった。任せとけ。安心して寝ててくれていいぜ♪ 大船に乗った気持ちでな♪」 早速、手近な缶詰を開けながら、ポルナレフは軽い口調で安請け合いする。 ジョルノは微妙に不安そうに眉を寄せたが、やがて軽く寝返りを打って、目を閉じる。 ――だが、目を閉じても、ジョルノはすぐには眠れなかった。 それは別に、若きポルナレフが信用できないからではない。彼の能力への不安があるからでもない。 まだポルナレフに語るわけにはいかない考えが頭の中に渦巻き、なかなか眠れない……。  *  *  * (『ゲーム』開始直後に、試しに出してみたぼくのスタンドは。  『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』ではなく、『ゴールド・エクスペリエンス』だった……  このことは、何を意味するのか) 一度はディアボロを撃破したジョルノ。その際用いた『レクイエム』ではなく、以前と同じ『ゴールド・E』。 そして、手元にあったはずの『矢』が、『矢尻』が、無くなっている。このことが意味することは…… (ぼくの会った『2001年のポルナレフさん』が、過去の経験談として語っていたように。  『矢』を取り上げられた『シルバー・チャリオッツ・レクイエム』が一度は『止まった』のと同じように。  ぼくの『レクイエム』も『矢』を失った、いや奪われたことで『元に戻った』、と考えるのが自然だ。  そして、もしもそうだとしたら……) そうだとしたら。かつてポルナレフがコロッセオで持っていたあの『矢』は。 ディアボロとの間で激しい奪い合いを演じ、最終的にはジョルノのものとなったあの『矢』は、今。 (ぼくを『この時代』に呼び寄せた、『アラキ』が奪ったということだッ! 『アラキ』が持っているということだッ!  もしも再び、あの『矢』を手にすることができればッ! 取り戻すことができればッ!) もしも再び、ジョルノが『矢』を手に入れれば。『ゴールド・エクスペリエンス』の『鎮魂歌』は再び奏でられ。 ジョルノ自身も、自分の『レクイエム』の力は完全には把握していないが…… たとえ『アラキ』が相手だろうとも、『首輪』があろうとも。 『ゴールド・E・レクイエム』の力が全てを無効化し、この事態を打開できる可能性がある! いや、最悪の場合、ジョルノ本人でなくともいい。 誰か『アラキ』と戦う意志を持つスタンド使いが、『矢』を手にし新たなる『レクイエム』を得れば! 今は抗う方法すら見つからない『アラキ』をも、打破できるかもしれない! だが……しかしここで、ジョルノは迷う。しばし考え込む。 (だが……この『可能性』、『1989年のポルナレフさん』に伝えていいものだろうか……?  あるいは、むしろ伝えておかねば危険なのだろうか……?) 『シルバー・チャリオッツ・レクイエム』。ジョルノが知るもう1つの『レクイエム』。 しかしそれは危険過ぎるスタンドだ。誰にも制御できない、暴走したスタンドだ。 周囲の生き物を無差別に眠らせ、近くに居るもの同士の精神と肉体を入れ替え。 その果てには、全ての生き物の精神と身体を、『別のもの』に作り変えてしまうという恐るべき存在! 『アラキ』に迫る手がかりを探し、『アラキ』を見つけ出し。『アラキ』が持っているはずの『矢』を奪還する。 そこまではいい。現時点で考えられる、ただ1つの細い道だ。 けれど間違っても、ポルナレフの『シルバー・チャリオッツ』を『レクイエム』にしてはならない。 ポルナレフ以外にも、『レクイエム』となった途端に暴走を始めるスタンドが居るかもしれない。 ジョルノ以外が『矢』を手にするのは、やはり危険が伴う。 果たして、予め全ての危険を語っておくべきか。 それとも2001年のポルナレフがそうしていたように、悪用を避けるため、ギリギリまでその知識を秘しておくべきか。 ジョルノは迷う。聡明な彼にしては珍しく、深く深く思い悩む。 そして、『レクイエム』といえば、悩ましい問題がもう1つ。 (そして、そう、問題は敵である『アラキ』の能力だ……。  時と空間を越えて人々を集める力。のみならず、炎使いの攻撃を防ぎ、少年を惨殺し、支給品の鞄を渡し。  こうして杜王町の人々を消し去り、電気を止め、ぼくらを個別に街のあちこちに飛ばし……。  普通のスタンドにしては、能力が多彩過ぎる。『1人1能力』という、スタンドの原則を大きく踏み外している。  何か1つの能力の応用発展、として解釈するには、あまりに飛躍が過ぎている!  そしてぼくは、それに似た飛躍を、既に知っている……!) 生命を『作る』能力も留めた上で、ディアボロの能力を無効化し、かつ、『終わりのない終わり』の彼方に放逐する。 無差別に眠らせ、精神を入れ替え、別の生き物に作り変える。同時に、攻撃してくる者の力を攻撃者自身に返す。 どちらの『レクイエム』の能力も、『単独の能力』として見るには飛躍がある。 複数の能力の組み合わせとしか思えない現象の数々。そしてその1つ1つが極めて強力。 ジョルノは、戦慄と共に推測する。 (もしかしたら、『アラキ』のスタンドも既に『レクイエム』なのかもしれない!  どこかで『矢』を手に入れ、『矢』のさらに先、スタンドのさらに先に到達した存在なのかもしれない!  しかもあの様子では、暴走などしていない! ぼくの『ゴールド・E・レクイエム』同様、完全なコントロール下にある!  だとしたら……それと戦うということは、『今のポルナレフさん』に説明した以上に、困難なことになる!) ジョルノは考える。考え続ける。考えながら、彼の思考は眠気に侵食されていく。 名簿に名前はあるが行方の分からないブチャラティ、ナランチャ、トリッシュ。 人格・能力共に信頼できるという1989年当時のポルナレフの仲間たち。 思ったよりも軽い性格だった、若い頃のポルナレフ。 ジョルノの思考は取りとめも無いところを彷徨いながら、次第に夢の中に落ちていく。 (何か、考え落としがあるかもしれない……。致命的な見落としがあるかもしれない……。  それにしても眠い……ポルナレフさんは信頼できる……少し眠ってから……日が昇ってから……考え直……) やがて、ジョルノは小さな寝息を立て始め。 闇の中に、ポルナレフが缶詰を食べる音だけが響く。 窓の外、夜がゆっくりと明けていく。1日目の朝が、やってくる。  *  *  * 冷静沈着なジョルノ・ジョバーナの、唯一の誤算。 それは、彼らが休んでいる間の、戦闘の激しさだった。 夜間にしか活動のできない、吸血鬼や屍生人、柱の男たちの存在。 深夜にも関わらず、積極的に動き回り、戦いを始めてしまったスタンド使いたち。 彼らの積極性、あるいは性急さは、かのジョルノにとっても完全に予想外であった。 ジョルノたちは知らない。既に何人もの死者が出ていることを。あのナランチャも『ゲームに乗ってしまった』ことを。 彼らが動き出すと決めた「朝日が昇る頃」には、既に事態は相当に進展してしまっているということを。 彼らが篭城を決めた農家に程近いところでも、参加者たちが歩き回り、戦闘を繰り広げていたことを。 ここでゆっくりと休息を取っておいたことが、今後の彼らにとって吉となるのか。 それとも、彼らは貴重で大切な時間を無駄にしてしまったのか。 そして――ジョルノたちの推測は正しいのか? 彼らに『荒木飛呂彦』に反抗できる可能性は残されているのか? それは今はまだ、神のみぞ知る。『荒木飛呂彦』のみぞ知る……! 【金と銀】 (←チーム名) 【ミステリーサークル近くの農家の中(D−2) ・1日目・早朝】 【J・P・ポルナレフ】 [スタンド]:シルバー・チャリオッツ [時間軸]:ヴァニラ・アイスを倒した後。DIOに出会う前。 [状態]:ジョルノのゴールドEにより完全回復済。十分な睡眠と休息。 [装備]:本人未確認。 [道具]:支給品一式、缶詰等の追加の食料品 [思考・状況] 1)ジョルノを助ける。ジョルノを守る。 2)アラキの打倒。(ただしポルナレフ自身に策はない) 3)承太郎たち信頼できる仲間を探す。 4)DIOとディアボロに対する警戒感。(ジョルノと違い、何があっても共闘など真っ平だと思っている) 5)アラキのスタンドが透明である可能性を検討する。 【ジョルノ・ジョバーナ】 [スタンド]:ゴールド・エクスペリエンス [時間軸]:ディアボロ撃破後 [状態]:健康。十分な休息を取っている最中。 [装備]:なし [道具]:露伴のバイク、支給品一式、詳細な杜王町の地図、缶詰等の追加の食料品 [思考・状況] 1)アラキの打倒。 『矢』を奪い返してゴールド・エクスペリエンス・レクイエムにアラキをハメる。 2)アラキを探す。アラキに繋がる手がかりを探す。 3)夜明けと共に家を出て、最初の説明を受けた教会を探す 4)ブチャラティたち信頼できる仲間を探す。 (ただし手がかりも無いので後回し) 5)ディアボロとDIOに対する警戒感。必要ならば倒す。必要ならば共闘する。(ただし手がかりも無いので後回し) 6)『矢』の真の力のこと・『レクイエム』のことをポルナレフに説明するべきかどうか悩み中。 [備考]:ジョルノたちは、未だ盗聴の事実に気付いていません。    『荒木』への反抗の意思、『最初の教会』を調べようという第一の方針が、『荒木』にも感知されました。    ただ少なくとも、この時点で即時爆破されることはなかったようです。

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