墓標

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『植物の様に平穏な生活がしたい―――』 それが吉良吉影の行動理念である。 それを守るためなら殺人をも辞さない。そうやって今までは守ってきた。それだけの力と自信はあるつもりだ。 「ふぅー。早く家に帰らなければな。もう少しの我慢だからね美奈子さん。フフフ」 そう語ると吉良は美奈子の手に話しかける。誰かが見ていたらその者の中で吉良は100%危険人物認定だろう。 しかしそんな事はお構いなしの吉良はバックの中の名簿を取り出す。 「何?空条承太郎に東方仗助に虹村億泰?広瀬康一もいるのか。クソッ!私達の平穏な生活の邪魔はさせんぞ!」 と言ったところで吉良は思い直す。 (でもまぁ奴等は私の今の姿を知らないからな。バレる事はないだろう。ああッ!実に平穏な生活が送れそうだッ!) しかし、吉良の望んだ平穏は奇妙な男との出会いによって最悪の結末へと向かう事になる。 「そこのオメーちょっと待ちなッ!」 いきなり声を掛けられた吉良は振り替える。と、少し離れた所に奇妙な男が立っていた。 雪色の全身スーツに身を包んだ珍妙なメガネ男。並の人間なら見ただけで腰を抜かしそうな鋭い眼光で吉良を睨んでいる。 穏やかな雰囲気等もちろんかけらも無い。あるのは吉良に向けられている殺気のみ。 そう。そこにいたのはプロシュートと別れ、ボスの正体を探る事にしたギアッチョである。 「なんだい?私に何か用かね?私は君とは面識はないはずだが」 「オメーの命貰い受けるッて良く言うがよぉ〜、命を貰うなんて意味わかんねぇ、出来ねぇだろうが!クソッ!クソッ! この苛立ちをお前にぶつけてやるッ!面識なんて関係ねぇーッ!」 ギアッチョは吉良の質問に答えるといきなり向かってきた。 「特に用なんてねぇ。が、殺すのが主旨のゲームってんなら話は別だッ!」 向かってくるギアッチョ。吉良はやれやれという様に両手を広げるとスタンドを出した。 「君も私の平穏を壊そうとするのかね。やれやれ仕方ない、死ぬしかないなッ!」 『ホワイトアルバム!』 『キラー・クイーン!』 二人共スタンドを発現させる。吉良の方が少し早い。攻撃は確実に当たると思われた。 しかし吉良の攻撃は空を切り当たらない。さらに吉良は自身の体の動きが鈍くなりつつある事に気付いた。 「な……んだ?何故当たらん……それより体の動きが鈍い……」 「フンッ!既にあまり感覚が無いみてぇだなぁッ!教えてやるぜぇ。オレのスタンドの冷気で体の動きが鈍くなりつつあんだよ。 ただ一発で完璧に凍らすつもりだったが……今の攻撃も危うく食らうとこだった。オメーかなりのやり手みてぇだな」 ギアッチョが吉良の身に起こった事を話す。しかし吉良は何故か落ち着いていた。 「美奈子さんすまないよ」 そう呟くと吉良は自身の支給品であった美奈子の手を放り投げた。 これに面食らったのはギアッチョである。 (コイツやべぇ。何で人間の手なんて持ってやがんだ?わけわかんねぇーぜクソッ!) と考えるのが先か美奈子の手がギアッチョと吉良の間で爆発する。 「何だとォォォォォ?」 「ふう。この熱風で体が多少は動く様になったな」 ギアッチョはまたも面食らう。奴の能力は一体何なのだろう……そう考えていると吉良が語り始めた。 「ふぅー。少し話そうか。私の名は吉良吉影。この町に暮らしているしがないサラリーマンだ」 「ああん?何が言いてぇんだ?命乞いってんならもっとわかり易くやれよ」 「やれやれ、ゆっくり話しを聞くことも出来ないのか。まぁ良い。 簡単に説明すると私は何よりも平穏な生活を大事にしている。そして君はその平穏を壊そうとしている。 よって君は私の前にあるトラブルであり敵というわけさ。殺られる前に君を始末させてもらう」 そう言うと吉良は地面に落ちていた石を投げ付ける。 このスタンドバトルという高レベルな戦いに投石と言う攻撃手段を用いた吉良の行為にギアッチョのプライドはかなり傷つけられた様だ。 「テメー!スタンド使いのくせにスタンドはスタンドでしか倒せないって基本も知らねーのかこのボゲェ!オレをナメてんのかッ?」 怒り狂ったギアッチョが再度向かってくる。だが吉良は相変わらず冷静である。 「ん?ナメている?それは勘違いという物だよ君ぃ。私のスタンド『キラー・クイーン』の特殊能力―― それは『キラー・クイーン』が『触れたもの』は『どんな物』でも『爆弾』に変える事が出来る。もちろん小石も例外ではない」 吉良はそう語るとスイッチを押すような仕草をする。するとギアッチョの眼前に迫っていた小石が起爆する。 ギアッチョの体は宙に舞った。 それを見て吉良は満足そうにうなづく。 「ふぅー、完全に消し飛ばす事は出来なかったか。だが邪魔者排除完了だ。美奈子さんには悪かったがこれでゆっくりと出来る」 そう呟くと吉良はその場を立ち去ろうとする。 しかし吉良は異変に気付く。また体が動かなくなってきているのだ。そんなバカな―― 確かに勝ったはずだった。今までもこれからも、キラー・クイーンの爆弾を相手に生きてる人間等いないはずなのだ。 (バカなッ?!確かに奴は今ので死んだはずッ!少なくとも動けるはずはないッ!) しかし見やると辛うじて生き延びたギアッチョが最後の力を振り絞るかの様に立っていた。 「へっ……氷のスーツのおかげだぜ……オレを殺したと思って油断したな……確かにオレはもう長くはないだろう…… だが悪いがオレ達暗殺チームのメンバーはッ!その命尽きる瞬間までッ!相手に噛み付くぜェェェ……」 ギアッチョが吉良に話す間にも吉良の体はどんどん凍っていく。 「バ……バカなぁッ!この吉良吉影がッ!この吉良吉影が死……ぬな……ん」 そこで吉良の意識は途絶えた。 後に残されたのは吉良吉影の氷柱であった。まるで彼と、そして彼に殺された者達を弔うかの様にそこにそびえ立っている氷柱。 それが杜王町を震撼させた殺人鬼、吉良吉影の最期だった。 ギアッチョはそれを見届けると既に限界だったのだろう。程なくして息絶えた。 ギアッチョが死んだ事によって吉良の氷柱も溶ける。が、既に吉良は死んでいる。もうどうにもならない。 ギアッチョ――ボスの正体に近付こうと仲間と誓った――しかし既に亡き者となっているプロシュートと共にボスの正体に辿り着く事はなくその生涯を終えた。 吉良吉影――杜王町を揺るがした殺人鬼。 しかし彼の願った平穏な暮らしは突如行われた荒木の気紛れ殺人ゲームに巻き込まれた事によって崩壊、終了し、そしてその命をも終える事になったのだった…… 【線路脇(D-3)/一日目/早朝】 【吉良吉影】 [スタンド]:『キラー・クイーン』 [状態]:死亡 【ギアッチョ】 [スタンド]:『ホワイトアルバム』 [状態]:死亡 吉良の支給品一式が吉良の死体のすぐ側に落ちています。 ギアッチョの支給品一式はキラークイーンの爆発の影響でギアッチョの死体より少し離れたところにボロボロになって吹き飛ばされました。

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