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038
戻る「……、こ、ここは?」 「ここは?じゃあねぇんだよこのダァボが!」 ペット・ショップの攻撃から逃れた億泰とついに目覚めたアブドゥル。 しかしまだ状況を掴めていないアブドゥルに対して彼を守ったが故に左腕を失った億泰はキレている。まぁ無理もない。 「そのケガ……まさか私をかばったのか?」 「ああそうだよッ!ホントお前なんて見捨てちまえば良かったぜ」 この男、マジでキレている。 「本当に申し訳ない事をした。礼を言おう。私の名は……」 「アンタの名前になんか興味はねぇー!とりあえずほっといてくれ。今から応急処置しに病院行くんだからよぉ」 と、言うと億泰は最寄の病院に向かって歩き出す。それに合わせてアブドゥルも付いて行く。 「付いて来んじゃねぇ!」 「待て、待つんだ。私も共に行こう。そのケガは私にも責任がある」 「ふん、付いてくるからにはちょっとは手助けしてくれよ。あっさり殺られんじゃねぇぞ」 二人は道中何気ない話をしながら歩いていた。 病院のすぐ側まで来たところでアブドゥルが尋ねる。 「なぁ少年よ。ジョセフ・ジョースター、空条承太郎、花京院典明、J・P・ポルナレフという男を知ってたりはしないか?」 「今なんつった?ジョセフに承太郎?その二人ならよーく知ってるぜ。知り合いか?」 アブドゥルは語り出した。DIOという男がいた、そしてDIOを殺すために旅をした事などの戦いの日々を…… 「承太郎さんから何となくだが聞いちゃあいたがよう……大変だったんだなぁ……」 「待て、何故その事を知っている様に話す?まだ旅は終わってはいないのだぞ。 いや待て。そういえば私達はDIOの館に突入する寸前だったはず……何故こんなところに……まさかあの荒木という男の能力は……」 「おっとぉ、話はそこまでにしとこうぜぇ。誰か近付いてきてるぜ」 ふと見ると30m程向こうに男がいる。どうやら向こうも気付いた様だ。 すると向こうがいきなり仕掛けたのか何かが飛んで来た。 良ーく見ると意外ッ!それは木の枝! 「木の枝だぁ?ナメてんのか?」 億泰はそう感じた。だがすぐに考え直す。 (いや、ただの木の枝じゃない。何かやべぇぜ……) と思うか思わないかのうちに『魔術師の赤!!!』 木の枝が燃え上がる。アブドゥルがスタンドを発現させた。 「野郎ヤル気なのか?」 億泰が息巻いていると男が素早い動きで近付いてきた。 「ヤル気ってんならこっちも黙っちゃいねぇぜ。ザ・ハンド!!!」 億泰もスタンドを発現させる。これに面食らったのはアブドゥルである。 (何とッ!このバカそうな少年もスタンド使いかッ) 助けてもらっといてバカ扱いとはあまりな言い草である。 が、それはさておき億泰のザ・ハンドが男を削ろうと右手を振り抜く。 しかし男はいとも容易く躱してしまった。 「何の手品か知らんが当たらんぞッ!食らえッ!稲妻十字空……」 「そういやぁよう。仗助と戦った時はこれを計算に入れてなくてバカ扱いされたなぁ」 すると攻撃を仕掛けた男の頭に病院の花壇脇の鉢植えが立て続けに命中する。 「あぎゃッ!」 男は沈黙した。 「うぅッ!一体ここは?」 「選ばせてやろう。私達の質問に答えて見逃してもらうか、それとも反抗して私達と戦うか」 「まぁこの状況で後者を選ぶバカはいねぇよなぁ」 男が目を覚ますと二人がスタンドを出して囲んでいる。これなら男が何かしようとしてもすぐに反応出来るからだ。 すると男は語り出した。 「待ってくれ。こちらも様子見をしようとしただけで戦うつもりはなかった。先程の非礼は詫びよう。だからその……良く分からん物を引っ込めてくれ。 ところで我が名はダイアーだ。そちらは?」 「ふん!お前何かに名乗る必要は……」 「先程も思ったが相手が名乗ったのに自分は名乗らないのは慎重とかじゃなく礼儀知らずってヤツじゃないか? おっと申し遅れた。私の名はモハメド・アブドゥルだ」 「……虹村億泰だ」 三人はお互いに名乗りあったところで情報交換をする事にした。だがその前に億泰は左手の処置をしに行っている。 「あぁクソッ!あの糞鳥がぁッ!凍ってたおかげで出血は抑えられてたがよう……」 億泰は治療をしながら呟く。 左手の欠損が切り落とされたわけではなく凍結によっての物だったのは不幸中の幸いだろうか? おかげで多少は出血量が抑えられていた。 が、痛い事には変わりないのである。 「あったくよぉ……あの鳥次に鉢合わせたらキューっと首でも絞めてトニオさんとこ持ってって調理してもらわぁ」 もちろんこのゲームにトニオ・トラサルディーは参加していない。名簿を見ればすぐわかるし街の状況を見れば参加者以外いないのも明らかだ。 しかし名簿など見ちゃあいない……そもそも見るという発送さえないだろう億泰が考えていたのは(ってかあの鳥は喰えんのか?)といった事である。 アブドゥルがバカ扱いしたのも否定は出来ないかも知れない。 ただ爆弾魔吉良吉影と渡り合っただけある。精神力はだいぶタフな様だ。 何せ腹を抉られても甦った男だ。左手がないくらいじゃへこたれない。というかじゃなきゃ普通こんな事考えられない。 (とりあえずこんなもんで良いか。まぁオレもちったぁ情報欲しいからとっとと戻るとするかぁ……) 「波紋、ジョセフさんが使っていたあれか」 「ジョセフという男は知らないがきっと同門なのだろう。それよりスタンド……と言ったか?興味がある」 アブドゥルとダイアーは互いの情報を交換してるうちにある共通の思いを抱いた。 (コイツ、私と同じ匂いがする)と。 しばらくすると億泰が戻ってきた。するとアブドゥルが本題を切り出す。 「一つ分かりかけてる事があるんだ。荒木の能力……恐らくスタンドについてだ」 「スタンドォ?あのオッさんもやっぱりスタンド使いなのか?」 億泰は不思議に感じた。教会に集められた時、確かに荒木がスタンドを出した気配はなかった様に感じたのだ。 「ここからは私の仮説だ。荒木のスタンドは恐らく記憶を操る能力だ。それなら私がDIOの館以降の出来事を知らずにここにいる事だけじゃなく参加者が知らず知らずのうちに集められた事も納得行くのだ」 わからなくもない理論ではある……だが、億泰は疑問に感じる。 「でもよぉ、それじゃあアンタが吹っ飛ばされたのや重ちーがスタンドを動かせずに死んだのは納得がいかねぇぜ」 「そうだ。君らの話からするにスタンドというのは自分で自由に操れるのだろう?記憶を弄るだけじゃどうに……」 「チッチッ!こう考えたらどうだ?まずは前者。 私が攻撃しようとしたが攻撃されたのは私だった件はまず皆に荒木がそこにずっといるという記憶を植え付ける。 するとどうだ?動いていても荒木は動いていない事になると思わないか?」 なんかこじつけくさい。というか意味不明である。億泰らは黙るしかない。アブドゥルは続ける。 「次に少年がスタンドを動かせずに死んだ事、こちらは簡単だ。記憶を弄ってスタンドの動かし方や体の動かし方を忘れさせたらどうだ?何も出来ないと思わないか?」 億泰もこっちは理解出来た様である。 ただしダイアーは深く考え込んだ。 (なるほど……スタンドとは何でもありなのだな……私の波紋では勝ち目がないんじゃあないか?) そう考えたダイアーはある提案をする。 「皆で行動しながら情報を集めないか?それをしながら他の参加者に打倒荒木を呼び掛けるのだ!」 その言葉に二人が返す 「賛成だな。仲間は多ければ多い方が良い」 「あぁ、今のままじゃあよう、生き残るのも大変そうだからな。賛成だぜぇ」 兎にも角にも三人で行動する事になった。当初の目的を決めようとする。と、億泰が切り出す。 「あのよう、オレのダチに仗助ってのがいてよう、そいつをまず探して欲しいんだが」 アブドゥルが尋ねる。 「ジョースケ?そいつもスタンド使いなのか?」 「ああ、物を治す能力を持つスタンド使いだ。アイツならオレの左手を治せるからな」 と億泰が答えるとダイアーが返す。 「だが慎重にいかないといけないのではないか?そいつがゲームに乗ってる可能性もあ……」 「とりあえず探して見るとするか。治療が出来る奴が仲間にいるなら心強い。それにもしゲームに乗ってるならその時はその時だ」 どうやら既にこのグループの中でも上下関係が出来てる様だ。 スタンドが使えないダイアーの意見は軽視されている様にしか見えない。 何はともあれ移動を開始した三人。果たして仗助らを仲間に加え、荒木を倒して日常に戻れるのだろうか。 まだまだ彼らの旅は始まったばかりである。 【杜王町東の病院/一日目/早朝】 【ジョジョ屈指の噛ませ犬夢のコラボ+1】 【モハメド・アブドゥル】 [スタンド]:『魔術師の赤』 [状態]:健康 [装備]:未確認 [道具]:支給品一式 [思考・状況] 1)とりあえずそのジョースケとやらを探すか 2)打倒荒木! 3)この男(ダイアー)とは同じ匂いがする 【ダイアー】 [能力名]:波紋 [状態]:鉢植えが当たって頭にコブ [装備]:なし [道具]:支給品一式 [思考・状況] 1)スタンド……何という能力!私にも発現しないかなぁ? 2)あれ?自分の扱い悪くない? 3)私の波紋や鍛えた肉体があれば戦える!よって待遇の改善を求めるッ! 4)でも目下の目標は打倒荒木だ! 5)この男(アブドゥル)とは同じ匂いがする 【虹村億泰】 [スタンド]:『ザ・ハンド』 [状態]:左手欠損 [装備]:閃光弾 [道具]:支給品一式 [思考・状況] 1)仗助早く会ってこのケガ治してくれーッ! 2)ただ……なんだろ?コイツらめっちゃ不安 アブドゥルが荒木の能力を記憶操作と勘違いしました。
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