『Oh! That's A Car Chase!!』

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「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!」 甲冑の屍生人は雄たけびあげ”武器”を振り回す。前方の獲物にかすめる距離までには近付いた。 あと少しィ・・・・・・あと少しィ・・・・・・あとはこの折れ曲がった交通標識でブッ叩くだけなのだ。 手が届きそうな距離まで近付いているハズなのに、攻撃は一向に当たらない。 あまりのもどかしさに男は焦りよりも怒りの方が湧きそうである。 「・・・・・・だいぶイラついているな・・・・・・スピードがどんどん上がっている。そろそろ仕掛けるか」 虹村形兆は合図をかけたように独り言を言う。 ハンドルを切り、車体がタルカスの進行方向にそれたのを確認し、思いっきりブレーキを踏む。 車はそのまま戦車に追い抜かれ、追う追われるの関係が逆転する。 タルカスも即座に吸血馬達をいさめ、逃がすまいと動きを止める。 後ろを振り向いたタルカスは少し驚く。自分の獲物の運転手が車から降りながら笑っているのだ。 「どうした。わしの後ろをとったのがそんなに嬉しいのか。・・・・・・見逃してくれるとでも思ったかッ?」 「このまま追いかけっこをし続けるのにも飽きた。だからオレは貴様に・・・あえて真っ向から『決闘』を申し込もうと思う」 意外ッ!それは決闘の申し込みッ! タルカスの心はときめく。 DIOのおかげで復活してからというもの、早く殺し合いがしたくてたまらなかった。 それがこんなに手っ取り早くッ!しかも向こうから挑まれる形になろうとはッ! 「いわゆる『特攻』というヤツだ。勝者が敗者を飲み込む・・・正面からの『ド突きあい』だ」 「フッ・・・わしのもっとも得意とする競技のひとつよ・・・・・・」 戦士達は睨み合い、戦いの準備をする。 男は交通標識で素振りをし、またもう一方の男は車に乗り込みアクセルを吹かしながら運転席のウィンドウを開けて身を乗り出す。 「最後に少し聞いてもいいか。貴様は一体何なんだ?・・・・・・スタンド使いなのか?なぜダメージを受けない?」 「『すたんど』・・・?あの奇怪な人形を操る事か?フン、わしは『77の輝輪』の試練を乗り越えし戦士タルカス!  屍生人として甦った今なおも・・・・・・力で殺しまくり破壊し尽すだけよッ!」 「ありがとう。『スタンド使い』じゃあなく『ゾンビ』なんだな。オレは虹村形兆。住所は」 「話す必要はないぞォ〜ッ!対戦相手の事など名前だけで充分なのだからなッ!」 「几帳面な性格なんだ。お望みで無いならば止めよう。これから決闘をする相手に何も語らないのは失礼と感じた。  貴様の最後になるであろう決闘の相手の事ぐらい知っておきたいだろうと思ってな」 「・・・・・・おもしろい」 しっかりとお互いの距離をとる。開いた距離はおよそ百メートル。 二人の審判は『間』。お互いの心と心が恋人同士のように触れ合うような情景が現れるその時こそ、『戦』の『開始』の『合図』。 雲の切れ目から・・・・・・               「月の光が」・・・・・・                              輝き、出でる。 「MUOHHH!」 「オオオオオッ!」 二つの塊は全速力で走り出し、数秒で距離を縮める。迫る戦車、迫る車。 死の境界線は既に超えている。 心は既に触れ合った。後は互いに一撃をぶつけ合わすだけ。 「作戦開始だッ!『バッド・カンパニー』!」 激走する車の周りに無数の兵隊と戦闘機(ミサイルを装備済み)が現れ、形兆を護衛する。 タイミングを見計らい、目標が来るギリギリの距離まで引き付ける。 決着まであと数メートル。 「そんなちっぽけな蟲の集団でどうしようとォいうのだァ『スタンド使い』ィィィィィ!」 「今にわかるッ!撃てェッ!全機発射(ファイア)ーーーーーーーーーーーーー!!!」 「効かぬと言ってるであろうがァァァァ・・・・・・ぬッ!?」 異常事態である。二匹の吸血馬達が大きく暴れているのだ。 そのスキを突き形兆の車はスピードを上げて悠然と戦車の横を通り抜けていき・・・・・・そのままあさっての方向に進んでしまった。 タルカスは何もしないまま呆然と車を目で追う。とりあえず一から頭の中を整理してみる事にした。 戦闘機はどこを狙った? 吸血馬達の目と・・・・・・足元だ。 突然のミサイルの爆撃で吸血馬たちは驚き・・・・・・一瞬足を鈍らせたのか。 「・・・・・・散々挑発し自分から真っ向勝負をしかけて、そのスキをつき『退却』をする。これが貴様の答えなのか?」 相手の『戦略』に整理がついた頭はわなわなと震えている。 一度でも男の言葉をう呑みにし尊敬の念を感じてしまった事に、怒りの血流が体内で暴れだしたようだ。 奇策を使う技士ならいざ知れず、『戦う』ことすらしない男が『戦略』を語る。まさにこれは戦士以前の問題。 全ては『戦』を侮辱する恥さらしに制裁を加えるため、タルカスは手綱を引いて吸血馬に踵を返すよう命じる。 ・・・・・・ところが馬は一向に進む方向を変えようとしない。本能のままにひたすら真っ直ぐに前進し続ける。 これは、どういう事だ。と言葉が出る前に馬の暴走の原因が目に映った。自分が先程までこの手で持っていた手綱が ―――――――プッツリと切れているではないか。 吸血馬達の勢いが止まらないまま、タルカスを乗せたチャリオットは進む。 手綱の側でナイフをくわえた兵隊達が作戦成功の喜びを分かちあっている。 これが虹村形兆がバッド・カンパニーに下した・・・『もう一つ』の『命令』であった。 『ヤツの馬車がUターンしようとした瞬間を狙って手綱を切れ。ただしできるだけ馬車のスピードを上げさせておくんだ』 シンプルかつありきたりだが凡用性は充分である『逃げ』の一手。相手の考えを上回る事こそ『戦略』の『醍醐味』。 「覚えておくんだなァ〜ッ。『撤退』も『戦』の一つだと」 作戦の成功に形兆は微笑む。 これでかなりの時間稼ぎにはなった。ブレーキをかける術の無いあの馬はそのままこの町を走り続けるだろう。 あの屍死人が慌ててチャリオットから降りて、馬に乗り換える為に動きを止めるだけでも充分だ。(馬を止めれたらの話だがな) 一時はブチのめしてやりたい気持ちにも駆られたが、ヤツのパワーとタフネスは極めて危険であり。 ましてや『スタンド使い』でもないのなら自分にとっての利用価値は微塵も無い。 そう、自分はさっさとトンズラをするだけでいい。 バックミラーに目をやる。映る姿はこちらを振り向きながら睨むタルカス。 「このま・・・がすと・・・もうなァ・・・!」 何か叫んでいるようだ。(勝手に叫んでろ) そしてタルカスは右手を高らかにあげ、体を反らせる。 次の瞬間、大きく手を振り下げている。 ヤツは、何をしたんだ。と言葉が出る前にとんでもないモノが目に映った。ヤツが先程まで右手で持っていた交通標識が ―――――――猛スピードで突っ込んでくるじゃねぇか。 交通標識はゆっくりと車を貫いていく、前後のガラスが華麗に車中で舞うのが一枚一枚ハッキリ見えている。 一種の黄金体験であろう。きっと今、アドレナリンが大量に分泌されているに違いないと形兆は認識する。 あと少しで商店街を抜ければ、見通しのつく杜王駅にたどり着く。 駅にさえ着けば少しは状況が改善するかもしれない、なんて事も言ってられないようだ。 「ダメだッ!間に・・・合わ・・・ナ――」 衝撃が伝わり、ハンドルがとられる。車はそのまま操縦者にそっぽをむいたまま回転し始め・・・・・・激突した。 * * * 「ご紹介しましょうッ!ここが”杜王駅”ですッ!」 「ああ・・・言われなくてもわかる。そこに『線路』が『見えて』いるからな」 イタリアギャングの幹部ブローノ・ブチャラティと自称宇宙人ヌ・ミキタカゾ・ンシは杜王町町の交通の中心となる駅に来ていた。 できるだけ戦わずに仲間を集めるのが目的である二人はまずこの町交通の便を調べる事にしたのだ。 「で・・・ヌ・ミキタカゾ・ンシ。最初にいたカフェテリアから一番近いという理由でここまでついて来たが・・・  この駅から杜王町一帯に移動できる事は『可能』なのか?」 最初に二人で話し合ってみたが、異世界の住人では無い事はわかった。 住んでいた時代すらさほど離れてはいないらしい。国がイタリアとニホンという事もわかっている。 日本の交通をかろうじてしか知らないブチャラティにとってこの町の住人であるミキタカの存在は非常にありがたい。 「うーんそれは無理です。この電車に一旦載ってしまうと、そのまま隣町まで止まりません。私も学校に行く時は大抵バスを使います」 「なるほどな。この町の住人はもっぱら移動に乗用車かバスを使う・・・・・・駅を使うのは主にニホンのサラリーマンといったところか」 アラキの言っていた事から察すると、電車に乗ってしまえばこの町を抜けてしまう事になり、それは即ち死につながってしまうようだ。 そんな野暮な行為はヤツだって充分予測しているはず。となればこの町に電気が通っていないのは明白か。 やはり移動には車が必要のようだ。地図で見る限りとても歩いて周れる広さではない。危惧していた事が現実となりつつある。 チームメンバー全員合流する前に再起不能・・・・・・それだけは避けたい。 ミキタカは「自分がブチャラティの靴に変身すればスピード&跳躍力が二倍になりより早く移動がしやすくなる」と提案をしたが、 それによる二人の疲労の度合いもわからず実行に移すのは短絡的であるとし、この案は見送ることにした。 「車がありそうな住宅街に案内してくれないか?もしくはバスが収納されている大型車庫でもいい」 「わかりました。車なら多分一杯あると思いま」 キキキィィィィィィィィ・・・・・ドッカァァ〜〜ン オレ達は・・・・・・『ツいて』いるのか? 捜し求めていた車はスリップ音と衝突音をお供にしながらあっさりと目の前に現れた。 *  *  * 「大丈夫ですか!!」 駅前広場にある『亀のいる池』。車はそこに衝突していた。 見れば見るほどこの車が異常な事に巻き込まれたのがわかる。 車のフロントガラスに突き刺さる交通標識。ぽっかりと開いたバックガラス。車内はガラスの破片にまみれている。 事故のはずがない。この運転手は間違いなく何かから逃げてきたのだ。 中にいる運転手をミキタカが車から出して介抱する。 ミキタカが彼の状態を見たところ、外傷は無く(打撲の可能性はあるものの)、気絶しているだけだそうだ。 (車探しくらい穏便にすませたかったが・・・・・・どうやらそうもいかないらしい) ブチャラティは車本体を調べる。エンジンのかかり具合、タイヤ、トランク・・・外観はひどい有様だが走行は可能のようだ。 これを使えば仲間探しはグンと楽になるだろう。この運転手の承諾は目覚めた時にすればすむ話だ。 イタリアと違って右ハンドルなのは違和感があるが・・・それ程大きな違いはない、と信じたい。 早速ミキタカに運転手と共に車に乗るよう促すが、ミキタカは一向に動かず遠くを眺めている。 「オイッ!何をしているんだ!」 「ブチャラティさん・・・・・・”あれ”は何でしょうか?」 ミキタカの視線の先にブチャラティも視線を変える。何かが遠くからやってくる。 「UROWOOOOOOOOO!逃がさんぞォ・・・・・・ニジムラ・ケイチョオー!」 「に・・・・・・虹村形兆!?まさか・・・・・・この人がッ!?」 「何をボサッとしているんだミキタカ!さっさと乗るぞ!!」 「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!」 タルカスの叫び声が杜王駅にこだまする。 ブチャラティとミキタカは車に乗り込み適当な道路を目指し、フルスロットルで走らせる。 馬とチャリオットで爆走する異形の巨人。 あれこそが先程突っ込んできた車の対戦相手である事に二人はよおくわかった。 「うぐぐ・・・オレは無事なのか?ハッ!?何だこの『状況』はッ!?」 巨人の雄叫びにあてられたのか、運転手は目を覚ましたらしい。起き上がるや否や後方のタルカスを見る。 切れた手綱はチャリオットに再びしっかりと結びつけられている。なぜタルカスは馬車の方向転換を可能にしたのか! ・・・・・・その答えはタルカスを運んでいる生物の『数』だ。 「野郎・・・馬を・・・片方の馬を『犠牲』にしやがった。デカイ馬の肉片を即席の『ブレーキ』にして馬車の動きを止めたのか!」 「WRY!自分の力でも止められる自信はあったが余計な怪我をするわけにはいかん。  貴様のような戦士を侮辱する男には全力を持って潰さんと腹の虫が到底治まらぬからなァァァァァ。  それに比べれば馬を一頭潰す事などたやすい事よッ!  そして何よりィィィ・・・・・・この馬を潰したのはァァァこの『馬の肉片』をわしの武器にする為よォォォォォォォォォォ!」 新たなる武器を手に入れたタルカスはッ! 吸血馬の生首を右手に掲げ! 渾身の力を加えながら! 豪速球の野球ボールのように形兆達の車に投げつける!! しかし間一髪ッ! 肉片は車に当たらない! だがッ! 戦いは始まったばかりなのだ! いずれ肉片は! 獲物を捕らえるだろう!! * * * 「この『殺し合い』は・・・・・・。どうやら先の長い戦いになるかもしれない・・・・・・」 「オイ聞いてんのか!誰の『許可』を得てこの車に乗っている!この車はどこに向かっているんだ!?」 「『勝手』に『使用』した事はあやまろう・・・・・・しかし身の『危険』が迫っているっていうのに立ち尽くす訳にもいかなかったんでな」 「貴様ら一体何なんだ!?スタンド使いなのか?」 「よくぞ聞いてくれました。実は私・・・『宇宙人』なんです」 車探しからここまで激しい戦いに参加させられる事になるとは正直予想外であった。 ブチャラティは運転席から深いため息をつきながら。早く太陽が顔を出してくれないかな、と思うのだった。 【巨象とイタリア風戦争アリのカーチェイスバトル 宇宙人添え】 【杜王駅から続く道/1日目 黎明〜早朝】 【F-3から南へ進行中】 【タルカス】  [種族]:屍生人(ゾンビ)  [時間軸]:ジョナサンたちとの戦いの直前。ディオに呼ばれジョナサンたちと初めて対面する前。  [状態]:戦士の誇りを傷つけられた事による怒り。さらなる戦闘の高揚。  [装備]:吸血馬1頭(最高時速60キロ)+チャリオット(ランダム支給品)、吸血馬の肉片(足×4、胴体の一部×6)  [道具]:支給品一式  [思考・状況]:   1)殺し合いのゲームに乗る(ただしDIOやブラフォードと遭遇した場合どうするかは、まだ考えてない)   2)最優先で虹村形兆をこの手で確実に潰す。   3)1)の延長として、目の前のブチャラティ、ミキタカも倒す 【虹村形兆】  [スタンド]:バッド・カンパニー  [時間軸]: 仗助と康一が初めて虹村兄弟と遭遇する直前。そのため父親を殺すことしか考えていない。  [状態]:全身打撲。  [装備]:特になし  [道具]:支給品一式、普通の乗用車(AT)(ランダム支給品)      ※現在の車の運転手はブチャラティ      ※へし折られた交通標識、多数のガラスの破片が車内にある。  [思考・状況]:   1)虹村兄弟の家の場所に戻り、父親がいるかどうか確認。   2)ブチャラティ、ミキタカから事情説明をさせる。   3)すぐ後ろのタルカスをなんとかする。あわよくば倒す、最低でも追えないようにして逃げ出す。   4)億康を探す(探してどうするかはまだ決めていない。探すためにも一旦「自分の家」へ)   5)優先順位は落ちるが……参加者の中にチラリと見た東方仗助に警戒感。 【ブローノ・ブチャラティ】  [スタンド]:スティッキィ・フィンガーズ  [時間軸]:サンジョルジョの教会のエレベーターに乗り込んだ直後  [状態]:健康。形兆の支給品の乗用車を運転中  [装備]:なし  [道具]:支給品一式 、フォーク (ランダム支給品)  [思考]:1)まずはタルカスから逃げる。場合によっては戦う。      2)車を使って(形兆の承諾が欲しい)、仲間と早く合流する(トリッシュがスタンドを使える事に気付いていない)      3)なるべく多くの人を救う      4)アラキの打倒 【ヌ・ミキタカゾ・ンシ】  [スタンド]:『アース・アンド・ウィンド・ファイアー』  [時間軸]: 鋼田一戦後  [状態]:虹村形兆の発見、及びタルカスによる動揺  [装備]:なし  [道具]:支給品一式(ポケットティッシュ)  [思考]:1)出来るだけ戦わずにタルカスをやり過ごしたいが、場合によっては戦う。      2)虹村形兆がここにいる理由を聞く。(死亡していなかった?)      3)味方を集めて多くの人を救いたい。  [備考]:このメンバーの移動しながらの戦いはかなり激しい。     通過する街並みの近く・あるいは進行方向に第三者が居れば気付かれる可能性大

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