ドッピオ、兄貴と戦う
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戻る(ちょっと……この人歩くのが早すぎるよ……僕が二人分荷物持ってるってわかってないでしょ) ドッピオは半泣きになりながらもエルメェスに付いて行く。 素姓を隠すために能力は見せられない。 そのせいか完璧にナメられている……荷物運びどころか下手したら弾除けに使われそうだ。 「おい、もっとキビキビ歩きなよ」 ホントに容赦ない。 (荷物を持たされるのはわかるよ。でも女の人って普通もっと気ぃ使うもんじゃあないかなぁ?) 二人は片やスイスイ片やゼェゼェの状態で歩いていた。やけに静かだ。 辺りに次第に霧が立ち込めて来た。 (あれ……何かやけに疲れてきたぞ……さっきより荷物重くないか?) 妙である。確かにドッピオは二人分の荷物を運ばされていた。 だがそれにしてもこうまでいきなり疲れるだろうか? だがドッピオは振り向いたエルメェスとの会話で自分の身に起きた事象に気付く。 「おいッ!お前もっと……ってお前それは何だぁぁぁぁッ!」 「エ、エ、エルメェスさんも何なんですかそれはぁぁぁぁッ!」 二人は絶叫した。無理もない。二人は共に一気に数十歳分も年老いた姿になっていたからだ。 「これは……スタンド攻撃かッ?バカなぁぁぁぁぁ!どこからどんな攻撃されているんだッ?」 エルメェスは慌てふためいた。人間、正体がわからない物には畏怖の念を抱く物だ。 しかしドッピオは違った。 (以前ボスに読ませてもらった組織の構成員の一覧……暗殺チームの中に老化させる能力を持ったスタンド使いがいたはず……) どうやら思い当たる節がある様だ。 ドッピオはそのスタンドの詳細を必死に思い出そうとする。 (ええっと……そうだ。霧に触れたら年老いる能力だったはず!) 「エルメェスさん!とりあえずそこの建物に隠れましょう!」 二人は民家に逃げ込んだ。依然ピンチは続くがこのまま外で霧に触れ続けるよりはマシだ。 「今民家に入った二人組よ。出て来い!隠れたところでザ・グレイトフル・デッドからは逃れられんぞッ!」 外に誰かいる様だ……ドッピオはボスからの電話を待つもかかってこない。 するとエルメェスが口を開く。 「お前はここに隠れてろ。あたしが奴をブッ殺してくる!」 そう言い残すとエルメェスはドッピオが何か言おうとするのを無視して民家を飛び出した。 (ボス何やってるんだよぉ……このままじゃ僕ら死んじゃうよ) とその時、ようやくボスから電話がかかってきた。 「とおるるるるるぅん。電話はどこだ?とおるるるるるぅん。あッこんなところに!最近の電話は小型化されてるなぁ」 ドッピオは転がっていた鉛筆を拾うと話始めた。 「はいもしもし、こちらドッピオ。ボスどうしてすぐに……」 『エルメェスのいるところで掛けるわけには行かなかったからな…… それよりも落ち着くのだドッピオ。奴を殺さないで逃げてもエルメェスという味方がいなくなってしまう……能力の一部しか使えないお前ではいずれ死んでしまうだろう』 「でもボス!今殺しに行ったらエルメェスにスタンドが使えるのが……」 『話は最後まで聞くのだドッピオ。攻撃するといってもただ攻撃するのではない。 今戦いに行ったエルメェスとやらもさすがに何らかのダメージを負わせるだろう…… エルメェスが倒せば問題ない……が、もし倒せなかった場合、意識が無い様なら一気に奴に近付け。良いか。2mだ。そこまで近付いたら私が行く』 「わかりました。2mですね……」 一方のエルメェスは既に相手との戦いに入っていた。 「お前ぇぇ!この能力を解け!解くなら特別に半殺しで許してやるッ!だが解かないのなら殺してやるッ!」 「お前……何か勘違いしちゃいないか?優位に立っているのも、命令をするのも、そして勝つのもオレだ!断じてお前ではないッ!」 次第にエルメェスは老いていく。この様子だと死ぬのにもそう時間はかからないだろう。 と、エルメェスは足下に落ちていた石を持てる力の限り投げた……が、見当外れの方向に飛んで行きプロシュートの後方に落ちた。 「おいおい、どこに投げてんだ?第一スタンド使いをそんなんで倒せると思ってんのか?」 「いや……これで良いんだ!」 するとエルメェスは手元に持っていた石から……いつの間に貼っていたのだろうか?貼られているシールを剥がした。 するとプロシュートの背後に転がっていた石がプロシュートの脇腹を抉りながらエルメェスの手元に戻ってきた。 「ぐおぉぉぉ……テメェ何をしたぁ……」 「『キッス』……」 エルメェスのスタンド『キッス』の能力だった。 シールを貼った物を二つに増やし、シールを剥がすとその物を破壊しながら元に戻ろうとする。それが『キッス』の能力。 「ほらまだ行くぞ!」 今度はガラスの破片を投げる。またもコントロールが逸れるもののそれはエルメェスの狙い通り。 地面でガラスが割れる。と同時にエルメェスはシールを剥がす。 エルメェスとガラスの直線上にいるプロシュートを寸分違わぬ精度でガラスの破片が襲う。 断末魔の叫びも挙げずプロシュートはその場に倒れた。能力も解除された様だ。老化が止まり元通りになる。 「お〜い出て来て良いぞ」 (スゴい……一人で倒してしまった) エルメェスとドッピオはプロシュートに近付く。 死んではいないが意識は無い様だ。 (どうする……?) エルメェスは考えた末、殺しはしないが二度と追って来ない様にきっちり半殺しにする事に決めた。 しかし、エルメェスが一歩近付き殴ろうとする瞬間、意識を失っていたはずのプロシュートが彼女に抱き付く。 「なッ!」 「直触りは早いんだぜぇぇぇぇ……」 能力解除もこのため……全ては罠だったのだ。 エルメェスは一気に見るも無惨な姿になる。気も失ってしまった様だ。 「なかなか手強かったが……終わりだ。死ねッ!」 「いや、死ぬのはお前だ」 プロシュートはいきなり横合いから蹴り飛ばされる。 (何だ……何が……しまった動けねぇ) 「一応そいつを殺されてはまだ困るのでな」 声のする方を見てプロシュートは度肝を抜かされた。 さっきまでそこにいたはずのひ弱そうな少年…… 今はもうその面影もない。どこから見ても修羅場をくぐってきた男の姿にしか見えなくなっていた。 「お前……一体何者なんだ……」 先の蹴りで動けなくなった彼に非情な言葉が続けられる。 「これから死に行くお前には関係ない事だよプロシュート……あの世で他の暗殺チームの仲間と仲良くするんだな」 (ギアッチョすまねぇ……しくじった……オレはここまでの様だぜ……) ディアボロの『キング・クリムゾン』の一撃が振り下ろされ無慈悲にプロシュートの頭を砕く。 プロシュートはまたもボスの正体に辿り着く事は出来なかった…… 「うっ……ここは?」 「あ、エルメェスさん気がつきましたか?」 エルメェスが気がつくとそこはドッピオと出会った公衆電話の前だった。 「隙を見て逃げてきたんです。上手く逃げ切りましたよ」 (アイツを出し抜いて逃げただと?) エルメェスは言い知れぬ不思議な感覚に襲われる。 だが自分がこの少年に助けられたのは事実なのだ。礼を言わなくてはならない。 「その……何だ?助けてくれてありがとうよ」 「いやいやいや!そんな。一緒に行動してる仲間として助けただけですから!ホントに」 エルメェスは知らない。ドッピオ自身の支給品の中にプロシュートから奪った拳銃と食料が入っている事を。 もちろん、そのプロシュートが既に亡き者になっていて、彼を殺したのが今傍らにいる少年のもう一つの素顔の仕業である事など知るよしもない。 「ほらッ!行くぞ」 「ああッ!ちょっと待って下さいよ〜」 こうして絶望の夜明けが少しずつ近付く…… 【公衆電話前(D-05)/一日目/黎明】 【ディアボロ・ドッピオ】 [スタンド]:『キングクリムゾン』 [状態]:ほぼ無傷/疲弊 [装備]:DIO様の投げナイフ(拳銃をしまう際に確認) ミスタの拳銃、これはプロシュートから奪った物 [道具]:支給品×2、またプロシュートの支給品から食料等をゲット [思考・状況] 1)まさかエルメェスの奴起きてなかったろうな? 2)プロシュートから支給品を奪ったのは黙っておくのだドッピオよ 【エルメェス・コステロ】 [スタンド]:『キッス』 [状態]:ほぼ無傷/疲弊 [装備]:ライフル [道具]:ドル紙幣等に加え、大量の石ころ [思考・状況] 1)どうやってアイツから逃げたんだ……? 2)ドッピオ……コイツまさか……考え過ぎか 【プロシュート】 [スタンド]:『ザ・グレイトフル・デッド』 [状態]:死亡 補足・一応同じ座標内にいますがプロシュートの死体とエルメェス達はかなり距離があります。
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