OP
戻るそこには、ただ闇だけが存在していた。目が覚めて最初の思考はこれだった。 しかし、確かに感じる人の気配。自分と同様に何人かは目覚めているようだが皆戸惑いの表情が伺える。 残りの人間は…まだ眠りから覚めていないようだ。 この時ジョルノ・ジョバーナの脳裏によぎったものは「ここがどこか」という事よりも、 「自分はどうやってここにきたのか」というものだった。自らこの場所に足を運んだ覚えはない。 そもそもここがどこであるかさえも分からないのだから。 ならば、考えられる事は一つ。 何者かによりここに「連れてこられた」のだろう。 直後、闇を独占するこの空間に、ボウっとした灯りが広がるのを確認する。 その正体は何十と連なった燭台であり、その先に立つ圧倒的な存在感を放つ一人の男の登場によってジョルノの思考は遮られた。 突如現れたその男は十字架の前で意味深な笑みを浮かべていた。 この異様な雰囲気と威圧感に倒れていた残りの者たちも目覚めたようだ、それと同時にここが教会だということに気付く。 そして、目の前の男はゆっくりと口を開く。 「みなさんお目覚めかな?…自己紹介をしよう。僕の名は荒木飛呂彦。君達を此処に集めたのは僕です。」 (アラキ…ヒロヒコ…?) ジョルノには聞き覚えのない名前であり、また見たことのない男であった。 だが、しかし… (僕はこの男を『知って』いる…!) 一度も出会った事の無い人物、だというのにこの感覚は何だ。 (気のせいじゃあない…!初めて見るこの男…だが、確かに僕はこの男を『知って』いる!) この感覚に彼は戦慄すら感じる。 頭での記憶じゃない。 まるで…自分自身の魂そのものが記憶している。…… (いや、そんなことより今考えなくちゃあならないのは、あの男の能力だ。 これだけ大勢の人間を一度に、しかも無意識のうちに集めることができる…やはり、あの男もスタンド使いか? だとしたら恐ろしいほど強大なスタンドパワーだ。このスタンドまだまだ秘密がありそうだ…) 荒木は言葉を続ける。 「君達を集めたのは他でもありません。今から君達には"殺し合い"をしてもらいます!これはゲームです」 荒木のその一言でその場にいる者は一様に驚きと戸惑いの色を隠せず、教会内は一瞬のうちにどよめいた。 「ルールは単純です。この場にいる全てを蹴落とし、生き残る。ここから元の世界に帰れるのは 最後まで生き残った優勝者だけです。 ですが、このゲームにはいくつかのルールがあります。 禁止事項を破れば、君たちのつけている首輪が爆発します。」 荒木の言葉に全員が首に手を当て、言葉を失う。 いつの間に着けられたのか? 無骨な金属の塊は大した重さも感じさせず、だが、確かに全員の首に巻かれていた。 「もちろん爆発と言っても小さなものですが……君達の首を吹き飛ばすには十分でしょう。 禁止事項は三つです。 一、この空間から逃げだそうとする。 一、放送された禁止区域に侵入したとき。 一、力づくで首輪を外そうと大きな衝撃を与えたり無理に取り外そうとする事。 放送は一日4回、6時間毎にあります。内容は、その時間内に死亡した者の名前。そして、それからの禁止区域。 つまり、活動できる範囲はどんどん狭くなるということです。注意してくださいね。 付け加えておきますが二十四時間以内に誰も死ななかった場合は全員の首輪が爆発するようになっています。 そして、くれぐれも…」 「チッチッ!」 一人の男の声により荒木の説明は一時断たれた。 大柄で色黒、首と腕に無数の装飾品を身につけた占い師、 モハメド・アブドゥルは怒りに打ち震えていた。そして… 「そんなくだらんゲームをしなくても、皆で元の世界に帰れる方法があるぞォォォー!! それはお前の息の根を止め、この狂った空間をぶち壊すのだァー!! アブドゥルのスタンド 魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)が背後より現れる。 「焼きつけろ!!クロス・ファイヤー・ハリケーン」 灼熱の炎は十字架(アンカ)の形となり、真っ直ぐと寸分の狂いなく荒木に向かってゆく。 しかし、標的であるはずの荒木は避けるでもなく、防御するでもなく、ただ、不気味な笑みを浮かべながら迫りくる猛火に 右手を翳した。刹那、炎は消滅した。まるで、その攻撃すらなかったことのように。 荒木は右手をほんの少しだけ前に押し出す。次の瞬間、驚きの表情のまま硬直したアブドゥルの体は 教会の入口である扉まで得体の知れない力によって吹き飛び、叩きつけられた。 「ぐはっ!!」アブドゥルはそのまま気を失った… 「やれやれ…くれぐれも僕を殺そうなど滅多なことは考えないほうがいいっと言おうとしたのに…」 再び教会は静寂が支配した。肩を竦め、軽い溜め息をつくと荒木は何事もなかったかのように説明を続ける。 「君達にはこれからある場所に飛んでもらいます、勿論バラバラにね。 このデイバッグを持って。みなさん一人一個ずつ受け取ってください」 突如として、参加者と荒木の間に黒いデイバッグの山が現れ、 デイバッグは参加者一人一人の元へ飛んでいきあっという間に全ての参加者に配られた。気絶したままのアブドゥルにも例外なく。 …いや、正確には配られていなかった、唯一人を除いて…その男は飛んで来るデイバッグを床に叩き付け、 「このDIOには必要なし!こんなもの無くても、暴れ牛に乗るカウボーイのように…このゲーム、楽しんでくれるわァァァァー!」 人間を辞めた吸血鬼。闇に君臨する帝王DIOは言う。 そして、また、腕を組み背中を壁に預け、クックッと不敵に笑う。吸血鬼の証である牙を覗かせながら… 「まぁいいでしょう…ではそろそろ始めましょうか。スタートの合図を……君にお願いしましょうか。」 そう言うと、荒木は右の掌を返す。DIOに向けられていた全員の視線は、一気にその直線上に立つ学生服の少年に向けられる。 少年は引き攣った表情をしている。 「オッ………オ、ラ……?」 自分の指を恐怖に歪む顔に向け荒木に問う。少年とは対称的な表情をしている荒木は微笑み軽く頷く。 それを機に、丸々と太った重ちーの体は不可思議に、ゆっくりと浮かび上がる。 3メートル程の高さまできたところで重ちーの体は空中に固定された。 「みなさん変な動きはしないでくださいね。動いたら………わかりますね?」 この言葉だけで荒木以外、動ける者はいなかった。それだけの力がこの言葉には込められていた。 言い終わると同時に、荒木は腕を伸ばし指でピストルの形を作る。 尤も荒木が模したのは、警察官やギャング持っているものではなく、 運動会などでは欠かせないあれだ。標準を重ちーに合わせる。 「黙ってやられちゃたまんないどォォ!!ハーヴェスト!あいつを殺せぇぇーー!」 重ちーの周りに100体以上の小さなスタンドが出現する。 だがしかし、ハーヴェスト達は本体である重ちー同様、動けない、動かせない。 それを見た荒木は高らかに言う。 「それではみなさん!バトル・ロワイヤル優勝目指して頑張ってください。 では位置について〜よーい……ドン!!」 「パパっっ!!!ママぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」 悲痛の断末魔は、誰もいなくなった教会に良く響いた…… 教会に残ったのは、血溜まり浮かぶ胴体と繋がっているはずの、首のない重ちーの死体だけであった。 ※アブドゥルは気絶したまま飛ばされました。支給品付きです。
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