『ECHOS ZOO〜愛を下さい〜』
戻るおいおい…冗談じゃねぇぜ。ジョースター達に連れ回されて何の因縁も無いDIOとその手下とまで戦わされて…(足まで吹っ飛ばされたぞ) で、今度はいつ連れて来られたのかわからないうちに殺人ゲームってか? イギーはただの犬じゃあない。スタンドを操れる。だが積極的に戦うつもりは更々なかった。 どうせその内この首輪とか承太郎達辺りがなんとかしてくれんだろ。アホのアブドゥルは即おっ死んでるだろうがな。 …まぁ助けに行ってやらんでもないかな…死なれても寝覚め悪ぃしな… ただ…荒木には近付きたくねぇ…アイツに逆らう素振り見せたら即座に殺されるだろうからな。 おもむろにイギーは支給品が気になった。バカに重ぇんだよなぁこれ。なーにが入ってやがんだ? ん?中に何か…植物? 「ウニャン?」 喋っただぁ?!植物が? とイギーが呆気にとられていると何かが飛んできた。攻撃か? 「フーッ!」 やめろ。オレは戦う気なんてねぇんだよ…た、助けてくれぇー! 「キャワーン!」 ん?何か犬の声が聞こえたぞ。犬がいるのかなぁ? このゲーム…現実の事なんだろうなぁ…不思議と気持ちは落ち着いてるけど。 あの殺されちゃった子、仗助君と億泰君が言ってた子だよね。吉良に殺されたって話だったのに。 何が何だかわからないや…幸い承太郎さんは杜王町のどこかにいるみたいだから承太郎さんと会ってみよう。 まずはそれが目的。でも仗助君達とも会いたいなぁ…不安だよ。 広瀬康一。一見頼りなさそうな少年であるが彼もスタンド使いである。 先にあった杜王町を影から恐怖に陥れていた殺人鬼、吉良吉影との戦いでも仲間を勝利に導いた。 康一が角を曲がるとそこは駅前。誰もいないか…いや、何か動いている。 薄明かりの中を凝視してみるとそこには見慣れた物が犬と戦っていた。 ちくしょーー。コイツ手強すぎる。なるべくスタンドは使いたくなかったが仕方ねぇ… 砂が集まりだし形を成そうとしたその刹那… 『エコーズACT3!3FREEZE!』 何だ?!スタンド攻撃か?誰が来たんだ? 「街灯の下か何か明るいところで目覚めちゃったのかな?袋に詰めておこう」 何だ…ガキか。と思うや否や…何考えてんだコイツ。あろう事か馴々しくオレの事抱き抱えやがった!ふざけんなテメェ。離せ! 「あれ首輪が付いてる…誰かの飼い犬が無理やり首輪付けられたのかな?」 康一はそこにいた犬を抱き抱えた。が、どう贔屓目に見ても明らかに嫌がってる。 「参ったなぁ…何か嫌われてるみたいだぞ。といってもこのまま置いていったら誰かに殺されちゃうよなぁ」 康一は騒いだらダメだよと犬に言ってみた。でも通じるわけないか。 騒いだらダメだよだぁ? このガキ誰に向かって口聞いてやがる。 こんな危ない状況で騒ぐなんて自殺行為だって事くらいわかってるぜ。 それにしてもこのガキ…頼りなさそうな面してるがスタンド使いか。 上手くやればオレと自分の身くらい守ってくれんだろ。 まぁオレは戦う気も…ましてやピンチにならなきゃスタンドも使う気ねぇからコイツに付いてくのが得策だぜ。 だがコイツうっとおしいな。いつまでオレの事抱き抱えてやがる。おいこら離しやがれ。 痛ッ!ホントに凶暴だなぁ…でも前に本で読んだけどこの犬種って利口なんじゃなかったかな? 覚えてないけど…まぁ下ろしても後を付いてくるだろ。 さていつまでもここに居たら誰か来るかな?とりあえず移動…おっと。ただ移動じゃ危ない人と鉢合わせちゃうかも知れないな。 『エコーズ!』上空から誰か来ないか見て来い! またスタンドか。さっきとは少し違うな。このガキのスタンド能力は何なんだ?物の動きを鈍くさせるだけじゃないのか? ……ん?何だ?何か近付いてくる…血の匂いか? ウウゥゥゥッ…! 何だ?犬が唸ってるぞ。エコーズで上から見たところ…何か近付いて来てる!誰だあれは? クソッ!暗がりで良く見えないぞ!とりあえず見つからないところに一旦隠れなきゃ! ほんの30秒もしない内に駅前に一人の女性が入ってきた…何やら息遣いが荒い。康一は目を凝らす。と、康一は一人の人物に行き当たった。 「由花子さん!」 「…康一君?」 「そうだよ。良かったぁ知ってる人に会えて…僕とても不安で…」 「私に構わずに今すぐに逃げて!もうすぐ奴が来る!」 何か様子がおかしいぞ。何ていうか…衰弱している。どうしたんだ? しかし康一は次の瞬間、おもむろに由花子の周りを回ったときに何故彼女が衰弱している理由に気付く事になる。 「由花子さん…左手が…」 山岸由花子は左手が肩から先にかけて無かった。暗くてなかなか気付かなかったが制服が血で赤く染まっている。腕以外にもところどころケガしている様だ。 「由花子さん!ええ…どうすれば…」 次の瞬間辺りが暗くなる。由花子がスタンド『ラブ・デラックス』で電灯を破壊したのだ。 「私は良いから早く逃げなさいッ!」 それから少し時間が経った駅前…一人の男がいる。顔も…服装もだ、電灯が壊れ辺りが暗いためハッキリと見えない。 「どこに行った女ァ!隠れようと無駄だ!出てこないならこの辺り一帯を消し飛ばすのみ!」 どうやら男はスタンド…いや、スタンドかはわからないが何か強力な力を持っている様だ。 「5秒だけ待ってやる。隠れて何の抵抗もせず死ぬか出てきて派手に死ぬか選ばせてや…」ゴホッゴホッ!ゲェホッ! ふいに女が咳こむ音。角を曲がったとこだろうか? 「まだ逃げるか…まぁ良い。少しずつ追い詰めてやる」 男はそう呟くと向こうの路地に消えて行った。 『エコーズ…』 康一はスタンドを戻した。エコーズの能力は物に音を染み込ませてその音を発させる能力。 康一は咄嗟にエコーズを発動し、由花子の咳こむ音を遠く離れた路地に染み込ませると、イギー、由花子と共に駅舎の中で息を潜めていた。 あの男…確かにヤバそうだ。しかし今は彼女のケガの方が大事。 傷は支給品の救急セットでほんの少しながら治療した。 しかしちゃんと治すには仗助に会って彼のスタンド…『クレイジー・ダイヤモンド』に治してもらうしかない。 「由花子さん…一体何があったか簡単にで良いから話してくれる?」 「…路地を歩いていたわ。確かに誰もいなかった。いや、いなかった気がしただけなのかも知れない。ふと気がついたら攻撃を受け…一瞬で左腕が無くなっていたわ。 もちろんすぐに反撃した。しかし咄嗟の事過ぎて混乱していたのかしら…まるで当たりもしなかった。 目が霞んで相手も良く見えなくなった私はスキを見て何とか逃げ出すのがやっとだったわ」 信じがたい話である。由花子のスタンドはかつて彼自身が身を持って味わう事になったのだがそう易々とやられる物ではない。 が、こうして彼女はケガをしている。一体何が… 冗談じゃねぇぜ…今の話を聞いてもヤバいのはわかるがさっき実際に見て感じた… アイツはヤバい。不意を突けばとかそういう問題ではない。オレ達じゃ勝てない。 クソッ!ホント何でこんな目に… このままここにいてどうなる物でもない…由花子さんの体力が少し回復したら…仗助君を探そう。まずは彼女を何とか助けてもらわなくちゃ… このゲームは一人しか生き残れない…それは康一もわかっているはず。 しかし彼はそんな事は知らないとばかりに座っている。彼は優しすぎるのかも知れない。 その優しさが命取りになるんだぜ。と、イギーが心の中で毒づく。が、イギーもまた何だかんだで離れようとはしない。彼もまた実は優しいのである… 辛い道程になるであろうがまだまだゲームは始まったばかり。彼らの苦悩はまだまだ続きそうだ。 【駅舎・一日目 黎明】 【イギー】 [スタンド]:『愚者(ザ・フール)』 [時間軸]:DIOの館突入直後 [状態]:健康 [装備]:猫草 [道具]:支給品一式 [思考・状況] 1)何でまた…冗談じゃねぇぜ 2)承太郎はともかくポルナレフの間抜け野郎はオレが助けてやらなきゃな 3)荒木…アイツにだけは近付かねぇぜ 4)このガキ…スタンド使えるにしろコイツ頼りなさそうだなぁ… 5)あの男はヤバい!もし鉢合わせたら死ぬぞ… 【駅前・一日目 黎明】 【広瀬康一】 [スタンド]:『エコーズact1.2.3』 [時間軸]:吉良との決戦直後 [状態]:健康 [装備]:救急セット [道具]:支給品一式 [思考・状況] 1)一体僕らはどうなっちゃうのかな? 2)由花子さんはどんな奴に襲われたんだ? 3)仗助君に会って由花子さんを治してもらわなきゃ! 4)ちなみにイギーがスタンド使いである事はまだ知らない。
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